2月8日(金) 北京で結婚披露宴

北京のケリーホテルで教え子の結婚披露宴の主賓を務めた。ちょうど春節(旧正月)の時期で、7日が元旦にあたるため、せっかくだから、中国の大晦日、正月を体験しようと6日に北京入りした。まず驚いたのは、来るたびに感じる空気の悪さ、あふれるばかりの人の数、そして交通渋滞がまったくなかったことだ。澄み切った静かな北京を見るのは初めてである。しかし、さらに驚いたことは、昨年5月にも北京に来たのだか、それからたった9カ月たらずで、街の光景がまったく変わってしまっていたことだ。行き慣れた建国門の周辺も、一体ここはどこだろうかというぐらい超高層ビル郡に覆われていた。オリンピックに向けて、中国を鼓舞するためであろうか。

超高層ビルが乱立する北京 中国語でスピーチ(最初のちょっとだけ) 通訳の教え子たちのたすけをかりて 新郎・新婦と 日本からの仲間といっしょに

確かに中国の経済発展はすさまじい。しかし、それは中国の一つの顔に過ぎない。わずかに残された昔の町並みでの庶民の生活はけっして豊かとは言えない。急速な発展による貧富の差は深刻な問題ではないだろうか。日本で大きな騒ぎになっている餃子の問題は、あまり報道されていなかった。色々な思惑が見え隠れする。真相を早く究明してもらいたいものだが、安い賃金で働く大量の中国人労働者がいることによって、日本人の生活が成り立っているという事実も考えなくてはならない。庶民を見ていてふとそんなことを思ったりした。

さて、結婚披露宴の話に移ろう。以前、小生が勤めていた高校は、中国語科があり、中国に留学する生徒や、日本の大学を卒業した後、中国で就職する生徒も多い。そんなこんなで、小生の教え子も北京の男性と結ばれたのである。この披露宴には僧侶仲間も招待された。中国の仏跡参拝をする際に教え子夫婦によくお世話になった僧侶たちで、教え子夫婦によって日中の友だちの輪が広がった。その友だちの代表として数人の僧侶も招待されたわけだ。

中国の披露宴は最初からリラックスしていた。司会者は新郎の親戚で漫才師の孫だけあって、最初から笑いをとっていた。日本のように厳粛ではないので主賓といってもあまりかたいスピーチは避けるべきと判断し、二人の出会いから今日に到るまでのことをユーモアを交えて紹介した。スピーチの最初こそ中国語で話したが(拍手を浴びてうれしかった⋯)、すべてを中国語で話す力などもちろんないので、中国語のできる教え子たちに通訳をお願いして、大役をなんとか務めた。

隣国とはいえ、中国と日本の披露宴は随分ちがう。中国ではひな壇はなく、一番メインの席に新郎・新婦、そしてその両親や主賓などが座り、友人などは末席近くに座る。ただ、日本からわざわざ来てくれたという感謝からか、教え子たちや僧侶仲間はメインの次のテーブルであった。小生もそのテーブルの方が気楽なので、事前に頼んで仲間といっしょに座ることができた。中国では、はじめの1時間ほど飲み物は多少飲むが、一切食事をせず、スピーチや余興を楽しむ。そして、その後に食事が始まり、陽気に酒を大量に飲む。新郎の親戚の方々が大勢で小生のテーブルに来て、白酒をついでくれた。そして乾杯して一気飲みをした。そんな光景がテーブルの到るところで見受けられた。予定にない余興も次々飛び出した。わが法友、田口弘君も後輩僧侶を引き連れて飛び入り出演。スピーチのおもしろさに加え、「祝い船」を自分で前奏をつけて歌い、大いに笑いをとった。

そして何より驚いたのは、披露宴の閉会が決まっておらず、自然解散ということだ。十分楽しむと招待客は次々と帰っていった。小生らは最後まで残っていたが、そうしたらホテルの従業員がかたづけと掃除をはじめたのには本当に驚いた。しかし、もしかしたら、そんな中国のほうがいいのかもしれない。日本はきちんきちんとやっているようだが、時間がくぎられ、何か枠の中に閉じ込められている感じもする。中国は最初からリラックスし、自然な感情でお祝いし、楽しみ、各自が帰っていく。ご自由にお楽しみくださいということが中国流なのだろうか。少なくともいやらしさがなくとても良かった。

教え子は一人娘である。その一人娘が中国に行ってしまうことにご両親は寂しさを感じられているようだった。「私たちも年をとっていきますので・・・」という教え子のお母さんの言葉に胸を打たれ、自分の3人の娘のことを思い浮かべていた。子どもは親の所有物ではない。でも嫁いで行く娘を笑って送り出せるだろうか。何かつらくなってきた。

9日は朝6時にホテルを出発し、8時台の飛行機で帰国した。3時から拙寺で門徒倶楽部(聞法会)があるからだ。中国の雰囲気のまま、法友の田口君と門徒倶楽部で聞法した。ホームページの掲示伝道の「涅槃の内実は、生の完全燃焼である」が話題になった。帰国していきなり自分のあり方を問われた。会が終わると、門徒倶楽部の面々と飲み交わした。ひさしぶり食べるまぐろの刺身がとてもおいしかった。

〔2008年2月14日公開〕