あなかしこ 第74号

あとがき

新型コロナウイルスのパンデミックが起きてから、3年が過ぎようとしている。当初は海外からの衝撃的な映像や、よく分からないウイルスへの恐怖から、多くの人は政府にいわれるまでもなく「自発的行動制限」を取った。かくいう私もコロナ下1年目は故郷に戻らず、仕事以外では蟄居状態だった。2年目の半ばを過ぎた頃、友達とも会うようになり、今では「気を付けながら」外で飲んでいる。このように生者との関係はコロナ前に回復しつつあるが、気になるのは死者、とくにコロナを縁として亡くなられた方のお見送りの多くが未だコロナ発生初期のままであること。厚労省の指針は遺体には飛沫感染の恐れはないとし、過度の対策は不要としている。だが今もコロナ感染死者の見送りは三年前とほぼ変わることなく「まず火葬ありき」で、以前のようなゆっくりとした亡き人との対面の時間をもてずにいる。最近もそうして親を失った人から「死の実感がわかない」という嘆きを聞いた。まるで葬儀の現場だけ時間が止まっているのは異様というほかないのだが、葬儀社をしてそれをさせしめているものに、この国がコロナ以前より培ってきた「死者」との関係がある気がしてならない。 (ち)

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