あなかしこ 第69号

“糞土師”伊沢正名さんと蓮光寺住職が対談

新型コロナウイルス禍にあって、法話会が中止になっておりましたので、今回は、自然保護運動に携わる糞土師の伊沢正名さんと蓮光寺住職の対談を紹介いたします。

対談は2019年12月27日に蓮光寺で実現しました。

まず伊沢正名さんをご紹介いたします。

伊沢正名(いざわ まさな)さん 1950年、茨城県生まれ。元自然写真家。高校中退後、自然保護運動を始め、'75年からは自然写真家として活動をはじめました。

'70年代前半「し尿処理場」の建設反対運動を目にした時でした。処理場で処理するものは自分たちの排泄物なのです。自分で臭くて汚いものを出しておいて、処理は他でやってくれという、人間のエゴに違和感を覚えますが、自然保護を叫んでいる私自身が、自分のウンコを自然の循環からはみ出させていることに気づかされたのです。それが、伊沢さんが「野糞」をする始まりでした。他人を責めるだけでなく、自分も同じであったと気づかされたのは、伊沢さんにとって、ウンコと向かい合った結果、自分のすがたに気づかされたということです。伊沢さんは、自然生態系が守られていく鍵がウンコにあり、そこから人間を見つめ直すことを考え始めました。

伊沢さんは、「食は権利、ウンコは責任、野糞は命の返し方」そして「ウンコに向き合うことは、自分の生きる責任に向き合うこと」という糞土思想の基本を受け入れられるかどうかと、現代の、特に良識人、常識人と言われる人たちに問い続けておられます。野糞生活の回数はこれまでに1万4500回を超えています。

著書に『きのこ博士入門』(全国農村教育協会)、『日本変形菌類図鑑』(平凡社)、『くう・ねる・のぐそ』、『葉っぱのぐそをはじめよう』(山と溪谷社)、『ウンコロジー入門』(偕成社)など。

伊沢さんのプログを読まれた一般の方々から、数多くの感想が寄せられています。

人間のエゴを徹底的に見つめ、生態系を守り、共存を訴える糞土師の伊沢正名さんと蓮光寺住職の対談は、「新型コロナウイルスの影響で人間の欲や経済活動や地球環境や生死について考えさせられる今、正面からこういうテーマを扱って語り合っているのがとても意義深い」「縁の考え方がとても興味深かった」「浄土真宗の名前は知っていたが、大自然と深くつながっている宗教だと初めて知った」という感想を複数いただいたようです。

対談に入る前に全世界がコロナ禍にある中で伊沢さんが、コロナ禍を縁に何を願われているかをお聞きしました。

【新型コロナウイルス感染拡大における伊沢正名さんの一言】「ウイルスをやっつけることは不可能なので、共存を考えないといけません。今回の騒動が、科学が進化して何でもできると思っている人間の傲慢さを捨て、自然の力に対し謙虚になるきっかけになればと思っています」

それでは、対談へ──

「ウンコは己の姿を映す鏡、阿弥陀の世界は生態系」(伊沢さんのブログ)

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