あなかしこ 第68号

あとがき

滋賀県多賀町にある宮戸道雄先生のお寺をおまいりしたとき、地元の名物という「糸切餅」をふるまっていただいた=写真。糸切餅は、米粉を搗いた柔らかい餅であっさりしたこし餡を包んだもので、餅の表面に赤と青の筋がついているのが可愛らしい。その名は、細く長くこしらえたものを糸で切り分けることからつけられたものだという。▼あるとき、多賀出身の先達がこんな話をしてくれた。その昔、伊勢神宮の門前に餅菓子屋を構えたのは多賀の人で、糸切餅の餅と餡を裏返しにして出した。それが、あの「赤福」なのだと。▼大阪の枚方に、蓮如上人が開かれた出口御坊・光善寺がある。このあたりの人々はこし餡を柔らかい餅でくるんだ団子をつくったが、その製法は上人が教えたものとも伝えられている。おまいりした帰りに最寄り駅の近くで売られている「でぐち団子」を食べた。糸切餅に似ているが、こちらはひとつひとつ手で包むという。餅によもぎを練り込んだものもあるのは蓮如さんは草餅がお好きだったからだと聞けば、いかにももっともらしい。▼思いも寄らないことが不思議につながっている。宮戸先生がお浄土に還られたとの報に接し、こんなことを思い出していた。合掌。(わ)

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