あなかしこ 「門徒倶楽部」機関紙

門徒随想

これまで仏教にあまり縁の無かった私ですが、四ツ谷にある〈坊主バー〉を訪れたのをきっかけに、お寺に足を運ぶようになりました。

それは2年前の秋、長く働いている職場で、ある任務から外されるという出来事が起こりました。このことは私にとってかなりショックであり、選ばれなかった理由をあれこれと考えては自信を無くし、仕事へのモチベーションも下がってしまいました。そんな中、一人の友人が「お坊さんのいるところでお酒が飲めるから行ってみない?」と誘ってくれたのです。彼女も時折そこに出向いては「愛のムチ」なるお言葉を頂戴している様子でした。

ある日の夜、仕事帰りに四ッ谷駅で待ち合わせをした私達は、まずは近くの居酒屋に立ち寄りビールで乾杯。お鍋をつつきながら、お互いに最近の出来事を語り合いました。そしてこれから行く「お坊さんのいるバー」で、これとこれに関して相談してみよう等と一応のプランを練り、いざ目的地へと向かいました。

狭い路地を入った雑居ビルの一室にあるバーには、一人で来ている常連客らしきサラリーマン、元気いっぱいの男子学生グループやカップル達がいました。この人達は、何かしらの想いがあってここで飲んでいるのだろうか。いったい皆どんな悩みを抱えているのかなと、ふと思いました。こぢんまりとした店内では、お経を唱えたり、リクエストテーマに対して説法を説いてくれます。そしてお客さんの話に親身に耳を傾けてくれるのです。

結局のところ、本当の悩み事を正直に伝えることは中々難しく、心を開くというのは容易ではないと痛感しました。しかしこれがご縁で蓮光寺を紹介して頂きました。ご住職の真のお言葉にはいつも励まされます。そして、さまざまな方々の話を聞きたくて、機会を見つけてはお寺に足を運んでいます。とても感動して涙が出るときもあります。しかし、数日経つと悲しいことに半分は忘れてしまっていることに気付きます。だからまた聞きに行く。そしてまた忘れてしまう。そんな繰り返しの中で、かけがえのない教えに出遇えればと思っています。

美月梨香 (会社員)

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